相続手続き(その2)~相続放棄、限定承認、準確定申告~

財務・税務・会計関連

「四十九日法要」も終わったので、遺産や相続税のことを考えないと…。

何から手をつけたらよいかしら?

所長
所長

3ケ月、4ケ月、10ケ月という3つの期限を頭に入れておくとよいですね。

音声データも用意しておりますので、併せてご利用ください。

 

1.相続放棄は3ケ月以内

相続が発生すると、亡くなられた方(被相続人)のプラスの財産(現金預金、有価証券、不動産等)だけでなく、マイナスの財産(借入金等)についても、原則として相続人に引き継がれます。

仮に、被相続人が多額の借金をしていて、プラス財産よりもマイナス財産(借金)の方が大きい場合には、相続人は新たな借金を負ってしまうことになります。

このような場合、相続開始(を知って)から3ケ月以内に家庭裁判所へ「相続放棄申述書」を提出することで、相続放棄を行うことができます。

相続の放棄をすると、最初から相続人ではなかったとみなされます。

相続の放棄は、相続人単独で行うことができます
例えば、相続人がAさん、Bさん、Cさんの3人いる場合でも、Aさん単独で相続放棄を行うことができます。

しかしこの場合、Bさん、Cさんも相続放棄をしないと、(BさんとCさんの)2人がマイナス財産(借金など)を引き継いでしまいます。

したがって、相続人がマイナス財産を相続しないようにするためには、相続人全員(Aさん,Bさん,Cさん)が相続放棄をする必要があります。

2.限定承認も3ケ月以内

「限定承認」とは、相続財産の範囲内でのみ借金を返済することを条件に、相続を承認する手続きです。

相続放棄と同様、相続開始(を知って)から3ケ月以内に家庭裁判所へ「相続放棄申述書」を提出することが必要です。

限定承認の場合、多額の借金(マイナス財産)がある場合も、(プラスの)相続財産の範囲で返済すれば済むので、相続人の負担は発生しません。

一方、借金を返済してプラスの財産が残った場合、残った分を相続人が取得できます。

このように、限定承認は一見すると相続人に有利な制度に思えますが、手続きが複雑なこと、含み益がある相続財産は(実際に売却していなくても)譲渡所得(みなし譲渡所得)に所得税が課税されてしまうため、利用件数は非常に少なくなっています。

ちなみに、相続放棄の年間申立て件数は約20万件、一方、限定承認は年間約800件に留まります。

いずれにしても、「限定承認」は利用頻度の低い制度なので、(検討する場合には)法律の専門家(弁護士等)と税務の専門家(税理士等)に相談する必要があると思います。

3.3ケ月以内に何もしなければ、単純承認

相続発生から3ケ月以内に、「相続放棄」や「限定承認」の手続きをしない場合、(何の手続きもしない場合)「単純承認」となります。

単純承認とは、相続人が被相続人(亡くなった方)のプラスの財産(現金預金、有価証券、不動産等)とマイナスの財産(借金等)をすべて引き継ぐこと(相続すること)を意味します。

実際、亡くなった方の財産がプラスであるケースが大半なので、ほとんどの場合は単純承認になります。

 

所長
所長

借金が多額でプラス財産を上回っている場合、「相続放棄」を検討しましょう。

プラスの財産が明らかにマイナス財産を上回っている場合、特に何もする必要はありません。この場合は、「単純承認」となります。

 

4.準確定申告は4ケ月以内に提出

被相続人(亡くなられた方)が、個人で事業を営んでいたり、不動産収入がある場合には、所得税の準確定申告が必要となる場合が多いです。

所得税の準確定申告は、相続を知った日の翌日から4か月以内に行わなければなりません。

通常の確定申告は、暦年(前年の1月1日~12月31日)に生じた所得について、3月15日までに申告するわけですが、準確定申告では、1月1日から亡くなった日まで(通常は1年に満たない期間)の所得を申告する手続きとなります。

したがって、準確定申告の作成要領は、通常の年(暦年)の確定申告書とほぼ同様となります。

なお、準確定申告書には、以下のような「準確定申告書の付表」を添付します。

5. 相続人が被相続人個人の事業等を引き継ぐ場合の手続き(補足)

被相続人(亡くなられた方)に関する手続きではありませんが、相続に関連して注意する点が一つあります。

それは、相続人が被相続人の事業や賃貸不動産を承継する場合で、事業を引き継ぐ相続人が「青色申告」を行いたいという場合です。

例えば、年金生活者だった配偶者や会社員(給与所得者)である相続人が、青色申告をしていた被相続人が所有していた複数の賃貸不動産を引き継ぐ場合などがその典型例となります。

この場合、改めて相続人が「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。仮に、被相続人が青色申告をしていたとしても、その地位は(自動的に)相続人には引き継がれません

また、青色申告承認申請書の提出時期は、以下のように相続発生日によって異なるので、提出期限に注意する必要があります(提出期限に間に合わない場合、その年の確定申告は「白色申告」となります)。

亡くなった日 青色申告承認申請書の提出期限
 1 月1日 から   8月31日 亡くなった日から4ケ月以内(=準確定申告書の期限と同じ)
 9 月1日 から 10月31日 その年の12月31日まで
11 月1日 から   12月31日 翌年の2月15日まで

 

所長
所長

準確定申告書は4ケ月以内です。
なお、相続人が(亡くなった方の)事業を引き継いで

青色申告を行いたい場合には、青色申告承認申請書の提出が必要です。
提出期限が4ケ月に満たない場合もあるので、注意してください。

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